• 勇者の石 全曲解説

    このアルバムの特徴は「物語」にある。
    一曲一曲に、短編小説のような物語が封じ込まれている。
    具体的な言葉で語られる物語は、その背後に無限の奥行きを秘め、聴き返すごとに、
    きみの成長とともに、新たな発見が生まれるだろう。

     

    ――― 歌詞ページはこちら ―――

  • オレが毎年海外へ行くのは、自分の内側から響く声を聞くためである。
    ダライ・ラマも言っていた。「一日30分でもいいから、一人になる時間を作りなさい」
    創作は外側からじゃなく内側から生まれる。きみの魂はすべてを知っている。
    だから心の声に耳をすまして、思い出せばいい。

    教育やマスコミは言う。
    「おまえの代わりなんか、いくらでもいる」「おまえに価値なんかない」
    しかしアメリカインディアンのサリッシュ族は言う。
    「地球にあるものはみな目的を持ち、いかなる病にもそれを治す薬草があって、すべての人には果たすべき使命がある。」
    比べることや標準を押し付ける社会のものさしなんか、叩き折ってしまえ。オレたちがこの時代に生まれたのは偶然なんかじゃない。
    きみはこの時代を変えるのに必要な勇者として選ばれたからここにいるんだ。
    きみがきみのまんま、存在する。ただそれだけで、誰かを幸せにしている。
    社会にとって役立つ人間になんかなるな。目の前の人にとって大切な人間になれ。

  • オレたちは、障がいや病気や怪我や不幸は悪いことと教えられてきた。
    ところがインディアンの長老は言った。
    「おまえの魂が成長したからこそ、そのギフトが与えられたのだ。障害や病気や怪我や不幸は勇者の証だ」
    オレはこの言葉を聞いた時、天地がひっくり返った。
    この壮大な宇宙観を知ったら、弱者としておとしめられてきた人々がどれだけ救われるかわからない。
    どうかあなたのまわりで苦しんでいる人に伝えてほしい。
    障がいをもった人、そのお母さんや家族、人生で何度もくりかえされる不幸、それがこそが勇者の石だと。

     

    4. Invisible world

    「目に見えるものだけを信じろ」と科学は教えてきた。
    ところが大切なものほど、目に見えないものなんだ。
    風、光、やさしさ、愛、勇気、魂、祖先、精霊、死者、神(サムシンググレート)など、見える世界は、見えないものたちに支えられて、ここに在る。

  • 「人はその人が生きたように死んでいく」
    その人が生前、たくさんの人を大切にしたら、大切にされて死んでいく。つまり今の自分がやっていることが、未来の自分をつくる。
    悪口もほめ口も、憎しみも感謝も、時間差をおいて必ず未来の自分に返ってくるブーメランだと知れ。
    たとえば雨が降る。公園を散歩するきみは「雨が降りやがって」と雨を憎む。砂漠の民やお百姓さんは「恵みの雨だ」と雨を喜ぶ。だけど雨はひとつの現象で、雨自体に善悪はない。
    それを憎しみと思うか、喜びと思うかは、きみがつくりだす世界だ。
    世界はいつも鏡として存在するだけで、きみがどの世界観を選ぶかで、憎しみの世界も喜びの世界もつくりだされる。
    だからきみは創造主であり、神なんだ。
    だったら憎しみの世界を選ぶのも、喜びの世界を選ぶのもきみ次第なんだよ。

    つぎの歌のインスピレーションになった作者不詳の詩は「無名兵士の祈り」「病者の祈り」などと呼ばれる。アメリカ南北戦争のとき、ひとりの兵士がベットの壁に書いた作者不詳の詩だという。

    カトリックのグリフィン神父が偶然見つけて、日本語に翻訳したので「グリフィンの祈り」とも呼ばれる。


     力を与えて欲しいと神に求めたのに・・・
     謙虚を学ぶように
     弱さを授かった。
     偉大なことができるように
     健康を求めたのに・・・
     より良きことをするように
     病気をたまわった。
     幸せになろうと
     富を求めたのに・・・
     賢明であるようにと
     貧困を授かった。
     世の人々の賞賛を得ようとし
     成功を求めたのに・・・
     得意にならないようにと
     失敗を授かった。
     
     願いはすべて聞き届けられた。
     心の中の言い表せない祈りはすべて叶えられた。
     
     大きなことを成し遂げるために
     求めたものは1つとして与えられなかったが・・・

      神の意にそわぬものであるにもかかわらず・・・
     私は最も豊かに祝福されたのだ。

     

    この主人公も疑いの世界から、信じる世界に改宗した。

    彼は弱くて、貧しくて、病気で、妻を亡くしたという現実は何も変わらない。

    しかし彼が「感謝」という視点を自ら選びとったことで、

    世界がひっくり返る。

    自分の運命を受け入れ、意味を見出し、100%肯定したんだ。

    きみが眠りから目覚める歌。

  • 仏典のスッタニパータ 第一章 第三節にこんな言葉がある。


     あらゆる生き物に、暴力を加えず、
     いかなる生き物にも、苦悩を与えず、
     子女を求めることなく、朋友を求めず、
     修行者たるもの、犀の角の如く独り歩め。
     交わりをなせば、愛情が生まれる。
     愛情が生まれれば、苦悩が生まれる。
     愛情から、苦悩が生まれるのを、見て、
     修行者たるもの、犀の角の如く独り歩め。
     朋友や親友などと、時間を共にし、
     心が絆されると、己の利が損われる。
     親交から、浪費が生まれるのを、見て、
     修行者たるもの、犀の角の如く独り歩め。

     

    これって、ちょっとちがうと思うんだよね。

    初期仏教のストイックな面が強調されすぎていて、

    人間の根源的な愛や弱さが否定されている。

    オレは愛や弱さも「犀の角」で象徴される自立であるように、

    人間そのものを受け入れる大切な自立だと思う。

    だから聖なる仏典を正反対から書き換え、矛盾を統合してみたかったんだ。

    オレは聖も俗も、清も濁も呑み込んで、世界はあると思う。

     

    仏教学者中村元さんが訳した「犀の角」自体が「剣の角」という誤訳説もある。

    しかし仏典そのものもブッダが書いたものではないし、

    「犀の角」というイメージが残ったのもなんらかの普遍的な意味があったんだろう。

     

    8. ふるさと

    原発事故のあと、10キロ地点まで侵入し、岩手や宮城や福島ライブを何度もおこなってきた。

    ふるさとを追われた人々は、異国のような他県で暮らし、仲間を見捨てた罪悪感に苦しみ、一生懸命生きている。

    ただ心の中のふるさとは永遠に失われないという希望を歌いたかった。

    オレたちのふるさとは、母や家族や愛する人や失われた過去であり、それを思った瞬間、いつでもふるさとへ帰れるんだ。

     

    9. これがわたしの家族です

    オレは酒乱の父や五歳のオレを見捨てた母を恨んできた。

    ところが大人になって「彼らも親であるまえに、自分と同じ弱い人間だった」と気づいた瞬間、彼らを許すと同時に弱い自分も許せた。

    両親とも亡くなったが、今オレはおとーちゃんもおかーちゃんも、世界で一番大好きだ!

  • 10. Proud

    さまざまなカウンセラーが言うように、親を肯定できない限り、自分も肯定できない。

    最初に親を肯定するところからはじめるんじゃなく、今の自分を好きになることからはじめよう。

    その瞬間、世界を丸ごと肯定できるんだ。

    誰もが幼い頃、親を恥じる。なぜ恥じるのか?

    それは社会から押しつけられたものさしから自分の親がはずれているからだ。

    大人になった今、社会に押しつけられたものさしが、世界中さがしてもありえない「パーフェクトファミリー」という幻想だとわかる。

    たんなる幻想を絶対唯一のものさしだと信じこまされ、オレたちはどれだけ親の愛情を踏みにじってきたことか。

    オレの尊敬する人は、エジソンでもアインシュタインでもない。だってエジソンでもアインシュタイもオレのことを知らないんだもの。オレに無条件の愛をそそいでくれてないんだもの。

    社会のものさしなんてどうだっていい。

    オレにとっての尊敬する人は、オレをこの世に生み、育ててくれた、ババチョフ(美智子)とトトチョフ(文夫)しかない。

    オレがこの世に存在し、生きてるのは、このふたりのおかげだ。

    オレはババチョフとトトチョフ、自分の親こそ、世界で最高の偉人だと思う。

    オレはあなたたちの子供に生まれたことを、はらわたの底から誇りに思う。

    つぎの歌、やばいのよ。

    何度聴いても泣いてしまう。

    祖父母や両親を思い出し、町で老夫婦とすれちがうたびに、手を合わせてしまう。

    人はなぜ、愛する人と出会いつづけるんだろう?

    きみが出会い、同じ時間をすごした人は、ありがたい仏様なのだ。

    もちろん妻が認知症になった夫は、うんこの世話をし、吐きもどしたゲロを掃除し、徘徊で警察を呼んだかもしれない。

    踏切を渡るたび、「このまま車椅子を止めて、いっしょに死のう」と何度思ったかもしれない。

     

     Annual Rings

     ふたりで時を刻む喜び

     Annual Rings

     手をとりあの空に帰ろう

     

    人はなぜ、死んでいくんだろう?

    それは「生命が選んだ、多様化への戦略だ」と頭では知りつつも、

     

    やっぱ、

    せつない。

  • 勇者の石

     2013年12月リリース。11曲。2500円。